「いまがその時、その時がいま」(1071号)・・ワーク・ライフバランスのAZA

着工から100年以上が経過しても今なお建設途中という、珍しい世界遺産「サグラダ・ファミリア」。完成までには300年以上を要すると言われていましたが、観光客増加によって潤沢になった建築費が要因となり驚異的な工期短縮を果しております。なんと2026年に完成することで今再び大きな注目を浴びています。そのサグラダ・ファミリアはスペインが世界に誇る建築家、アントニ・ガウディの最高傑作でもあります。日本の彫刻家、外尾 悦郎氏(そとお えつろう氏)は、スペイン、バルセロナのサグラダ・ファミリア主任彫刻家でもあります。今日は外尾氏の「いまがその時、その時がいま」との心が熱くなるお話をご紹介致します。サグラダ・ファミリアを設計したガウディも「人間は何も創造しない」という言葉を残しています。では我われには何ができるかといえば「発見」しかできないんですね。ガウディが「私は神の創造に寄与しているだけだ」と述べたように、草木が育ち鳥が空を飛んでゆく。その不可思議な、人間業では成し得ないものの美しさ。そうしたものを求めてそれに近いものをつくっていく。そのためには「観察」が大切、観察なくして発見はない。だから人間にとって一番大切なのは観察すること、つまり現実から逃避しないこと。その現実に正面から向かっていく勇気が重要だと、ガウディも説いているのだと思います。私は長らくサグラダ・ファミリアの職員ではなく、一回一回、契約で仕事をする請負の彫刻家でした。教会を納得させる作品ができなければ契約を切られる可能性がある。命懸けという言葉は悲壮感があってあまり好きではありませんが、でも私自身としては常に命懸け。というのも命懸けでなければ面白い仕事はできないからです。ただ本来は生きているということ自体、命懸けだと思うんです。戦争の真っただ中で明日の命も知れない人が、いま自分は生きていると感じる。病で余命を宣告された人が、きょうこの瞬間に最も生きていると感じる。つまり、死に近い人ほど生きていることを強く感じるわけで、要は死んでもこの仕事をやり遂げる覚悟があるかどうかだと思うんですこの三十四年間、思い返せばいろいろなことがありましたが、私がいつも自分自身に言い聞かせてきた言葉かありましてね。「いまがその時、その時がいま」というんですが、本当にやりたいと思っていることがいつか来るだろう、その瞬間に大事な時が来るだろうと思っていても、いま真剣に目の前のことをやらない人には決して訪れない。憧れているその瞬間こそ、実はいまであり、だからこそ常に真剣に、命懸けで生きなければいけないと思うんです・・彫刻家の話ではありますが私達にも通ずるものがあるのではないでしょうか。設計の仕事もゼロからものを想像して作り上げていくことは一緒です。また長く仕事を続けていると目標や目的などを忘れてしまいがちですが、いつかではなく「いまがその時、その時がいま」なんですね。心が熱くなるお言葉です。

エンジニアリング事業部・最近の実績☆☆AtoZtoA