金属加工などを手掛ける町工場が集積する東京都大田区。この「ものづくりのまち」には、複数の町工場が加工工程を分担し、一つの製品を作り上げる独自のネットワーク「仲間まわし」が根付いています。「仲間まわし」は「ちゃりんこネットワーク」とも呼ばれています。小さな町工場が協力し合う″ものづくりの輪″を守り抜くため、大田区は今月下旬から、デジタル技術を活用し、受注から納品までをインターネットでやり取りできる官民連携の取り組みを開始します。新たなシステム【図参照】は、大田区と区産業振興協会、区内の町工場5社で構成される合同会社「I-OTA(アイオータ)」が運用します。ネット上のグラウトサービスを活用し、大手企業や研究機関からの受注情報を各町工場が素早く共有することができるほか、町工場が請け負いたい工程ごとに手を挙げることもできます。これまでに区内約70の町工場が同システムに登録する意向を示しており、本年度中に200社程度まで増やすことをめざしています。将来的には全国の製造業者にも協力を呼び掛ける方針になっています。切削や穴開け、研磨など得意分野が異なる町工場が加工工程を分担する「仲間まわし」は、1社単独では引き受けるのが難しい案件への対応力を強化させ、ものづくり産業が発展する源となってきました。一方、町工場間の受発注や納期の確認は、これまでファクスや電話が中心で案件によっては、発注書や図面が数百枚に達し、やり取りが煩雑になることも少なくありませんでした。そこで新たなシステムの試験運用を実施した結果、依頼にかかる時間を10分の1程度に抑えられるなどの効果がみられました。「細かな手間が省ければ、製造作業に注力できる」生産性向上に期待が寄せられています。官民で″ものづくりの輪″を守ろうとする背景には、産業衰退への危機感がありました。町工場は後継者不足による廃業や、取引先企業の海外移転など課題が山積しています。コロナ禍での経営難も相まって1983年のピーク時に9000を超えていた区内の製造事業所数は、約4 2 0 0まで減少しました。ものづくり産業の衰退を食い止めるため、2017年からアイオータは、lOT(モノのインターネット)を活用した試みを企画するなど打開策を探ってきました。「受注するだけの下請けの枠を超え、アイデアを発信できる集団として、日本のものづくりを支えていきたい」と意気込んでいます。ITを導入しDXを進めるのは一企業ではなく複数の企業間で行えれば、効果は大きいのではないでしょうか。
エンジニアリング事業部・最近の実績☆☆AtoZtoA