「FPD市場(フラットパネルディスプレイ)の現状」(1225号)・・FPD製造装置設計のAZA

私達のお客様は、半導体製造装置メーカーであるのとともに、FPD製造装置メーカーでもあるお客様が多いです。半導体関係は堅調ですが、FPDはどこのメーカーも苦戦中です。需要の減少と価格下落でリーマン・ショック時並みの厳しい市況に晒されているFPD業界。業績悪化に伴い、増産計画の多くが延期・凍結されていますが、そうしたなかでも戦略投資として量産拡大に向けた動きが活発化しそうなのが、マイクロ有機ELディスプレーです。2023年には大手FPDメーカーによる事業化が具体化しそうで、これまでと競争環境が一変する可能性があると言われています。 ソニーグループ が昨年1月に発表した直視型マイクロLEDディスプレー「Crystal LED」は、同年6月に東宝スタジオに映画撮影用のバーチャル背景、バーチャルプロダクションシステムとして採用され、映画撮影のロケを不要にしました。大型テレビなどへの採用は少し先のこととなるようですが、今後量産化のための技術の話題などもメディアを賑わすとみられ、今から注目しておきたい技術です。マイクロLEDは、基板上に一辺数十から100マイクロメートル(マイクロメートルは100万分の1メートル)角の赤、青、緑の3色のLEDを敷き詰め、発光することで映像を表示する方式です。液晶ディスプレーの高精細化技術としては、ミニLEDがありますが、ミニLEDはバックライトのLED光源エリアを分割し、画柄に合わせ輝度を制御する方式です。LEDをバックライトに使うミニLEDとは異なり、有機ELと同様に1画素ごとに発光させることから、更に高精細・高応答速度となり、かつ低消費電力を実現します。また有機ELは寿命が短いのが弱点ですが、マイクロLEDの寿命は長いのも特徴です。このマイクロLEDディスプレーは家庭用テレビでも応用が進んでおり、韓国サムスン電子は昨年から富裕層向けにマイクロLEDテレビをグローバルで展開しています。ただ、同社が販売する110インチテレビは受注生産で価格は約1600万円とされ、家庭用としての普及段階にはまだ遠いのが現実です。ソニーやサムスン電子は、当面はバーチャルスタジオのようなビジネス用途で市場を開拓する方針とされています。参入企業も増加中でマイクロLEDディスプレーの開発に取り組んでおり、量産化に向けた動きは更に強まりそうです。それとは別にAR・VR用のマイクロ有機ELも動き出しています。低迷しているFPD業界の復活と活性化につながることを期待したいです。

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