技術屋のサブスク病気やケガなどで失われたからだの機能をとり戻したい。原因がよくわかっていない難病を治す薬が欲しい……。「iPS細胞」は、そんな願いをかなえてくれる可能性を秘めています。今日はこのiPS細胞人工多能性幹細胞(iPS細胞)についてどこまで研究や作製が進んでいるか御紹介します。大学・研究機関や企業に提供する京都大iPS細胞研究財団(山中伸弥理事長)は、再生医療への応用を拡大するため、飛躍的に拒絶反応が少ないiPS細胞の作製を進めています。拒絶反応が起きにくい白血球の型を持つ人の血液から作ったiPS細胞に加え、ゲノム編集技術を使って拒絶反応を抑えたiPS細胞も作製し、今春の提供開始を目指しています。山中氏は「実現すれば、日本人のほぼ全員と世界の大半の人に適合するiPS細胞を提供できる」と語っています。ヒトのiPS細胞は山中氏が2007年に作製に成功。従来の再生医療は受精卵から作製した細胞しか使かえませんでしたが、iPS細胞の発見により、血液や皮膚の細胞からさまざまな種類の細胞を作れるようになり、再生医療の応用への可能性が広がりました。iPS細胞を使った臨床研究や治験は、目の病気「加齢黄斑変性」やパーキンソン病などで実施。がんを攻撃する機能が活性化した免疫細胞をiPS細胞を使って増やす「がん免疫療法」への応用も進んでいます。しかし、再生医療への応用を拡大するには、研究機関や企業にiPS細胞を安定して迅速に供給する必要があるのです。そこで京都大のiPS細胞研究所が2013年からiPS細胞を製造、備蓄、提供するプロジェクトを開始。2020年からは同研究所から分離・独立したiPS細胞研究財団が引き継いでいます。
①2015年には拒絶反応を起こしにくい白血球の型を持つ人の血液から、日本人の約4割に適合するiPS細胞の作製に成功。加齢黄斑変性の臨床研究やパーキンソン病の治験などですでに活用されています。
②このiPS細胞の遺伝子を改変して拒絶反応をさらに抑制するゲノム編集技術を2019年に開発。現在、作製した細胞の安全性の検証を進めており、今年5月の提供開始を予定しています。
③このほか、患者自身の細胞から作製するiPS細胞「マイiPS細胞」の提供も計画。大阪市に製造施設を置くことが決まっており、2025年からの提供開始を目指しています。山中氏はこれらを「臨床用iPS細胞の三つの柱」と位置付ける。「iPS細胞を大量に作製、提供できるようにすることで良心的な価格を実現し、患者の一日も早い病気の
治療につなげたい」と語っています。iPS細胞の実用化がこんなに進んでいるんですね。