「脱炭素社会への切り札・GaNパワー半導体とは・・」(1338号)業界初・ものづくり技術支援をサブスクで提供するAZA

技術屋のサブスク GaNパワー半導体市場の拡大が加速してきています。参入各社の増産計画も浮上してきており、これまで慎重だった日本企業からも事業化に向けた動きが出始めています。今日はこの GaNパワー半導体について解説致します。
【GaN(窒化ガリウム)とは】
III/V族の化合物半導体(*¹)で、Siの約3倍にあたる3.4eVのワイドバンドギャップ(*²)特性を持っています。この素材は非常に硬く、機械的に安定であり、高い熱容量と熱伝導率を備えていますが、その一方で機械的、化学的な加工が難しいとされています。1990年代から青色発光ダイオード(LED)(*³)に採用が始まり、その後は通信基地局向けのGaN HEMT(*⁴)としても広く使われています。近年では、省エネデバイスとしての特性や高耐圧特性が評価され、スマートフォンやPCの急速充電器としても採用が進んでいます。そして将来的には、電気自動車(EV)の車載DC-DCコンバータやデータセンター向け電源としても成長が期待されています。さらに高放射線環境下でも安定性が確認されており、軍事・宇宙分野での応用も期待されています。GaNは多岐にわたる分野での活躍が期待される次世代素材として注目されています。
【GaNデバイスの今後の市場予測】
パワー半導体の市場(世界)について経済産業省 「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)の概要
2021年より抜粋を以下の通り掲載しますので参照して下さい。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/003_04_00.pdf
【GaNパワー半導体の用途】
GaNパワー半導体はSiCと同様に高耐圧かつ優れたスイッチング特性を持ちます。ワイドバンドギャップが大きいため高熱下でも動作可能で、絶縁破壊電界が11倍あるため高耐圧性があります。電流低損失、省エネ化が可能で、高周波デバイス用途にも向いています。ただし、熱伝導率が低く、横型構造のため大電流用途ではSiCに劣ります。現在は750V以下のサーバー電源や急速充電器に主に使用されていますが、縦型構造の採用によりEVのインバータ等での採用が期待されています。
【用語集】
*¹ 化合物半導体:2種類以上の元素が結合してできる半導体です。化合物半導体となる元素の組み合わせは代表的なものにIII族とV族元素、II族とVI族元素があり、それぞれIII-V族半導体、II-VI族半導体と呼ばれています。
*² ワイドバンドギャップ:従来の半導体よりもバンドギャップが大きい半導体材料です。シリコンやガリウムヒ素などの従来の半導体材料よりもはるかに高い電圧、周波数、温度でデバイスを動作させることが可能です。
*³ 青色発光ダイオード:電気エネルギーを光エネルギーに変換する発光ダイオード(LED)のうちの一つで、窒化ガリウム (GaN) を材料とする、青色の光を発する発光ダイオードです。
*⁴ HEMT:HEMTは高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor)の略称です。電界トランジスターの一種で横型のデバイス構造で、電子が発生する層と電子が走る層がわかれており、上層の不純物が入っている層で発生した電子は、不純物が入っていない高純度の下層に移動してから、出口電極(ドレイン)へ向かって移動するので、電子が不純物にぶつかることなく移動ができます。そのため雑音が少なく、電子の移動速度を最大限に引き出すことが可能な構造となっています。

エンジニアリング事業部・最近の実績☆☆AtoZtoA