「デジタル先進国・フィンランド」(1153号)・・技術屋の相談役のAZA

「デジタル先進国」フィンランドのDX 在日大使館に聞く組織改革の進め方 についてのお話をさせてください。「デジタル先進国」として知られるフィンランドは、税金や医療などあらゆる個人情報が、デジタルトランスフォーメーション(DX)で一元管理され、民間企業のDXでも先頭を走っています。フィンランド大使館で報道・文化担当参事官を務めるレーッタ・プロンタカネンさんに、同国でDXが進化した歴史と背景、日本企業がDXによる組織改革を進めるために必要なポイントを聞きました。
フィンランドでDXが進んだ理由】
フィンランドのDXの歴史は古く、1960年代には国民データのデジタル化に取り組むため、個人識別番号が導入されました。それが長い年月をかけて進化し、現在では社会保障、税金、医療などのあらゆる個人情報とひもづけられ、人々の生活により良い影響をもたらしました。幸い、フィンランド人は常にアーリーアダプターで、新しいツールやサービスを、好奇心旺盛に試す傾向にあります。こうした背景から、DXが積極的に推進されてきました。
例えば、国民からは、行政機関でオンライン手続きを進めて行列に並ぶ時間を省きたいといった、より良い公共サービスの要望があり、国もそれを望んでいたために改革に乗り出しました。企業においては、仕事の効率を高めて生産性を上げるため、常にDXの進化が求められています。 日本にはない公共サービスでのDXで、代表的なものは医療サービスにおけるDXです。医療記録が載った電子カルテが個人識別番号で一元管理されており、初めて行く病院でも、個人情報を記入したり、病歴や常備薬を説明したりする必要がありません。
処方箋もオンラインで管理され、印刷された紙を薬局に持参することもありません。新型コロナワクチンの接種証明書も、オンラインで発行されています。
【DXサポートを手厚く】
フィンランドのデジタルサービスは、60年代からじっくりと時間をかけて導入したため、国民は比較的スムーズにDXに適応できました。教育システムの充実で、国民のデジタルリテラシーが高いことも、DXを後押ししています。しかしながら、必ずしも国民全員が同レベルのデジタルスキルを持っているわけではありません。誰もが平等にDXの恩恵を受けられるよう、特に高齢者のデジタルスキルに関するサポートに、力を入れました。 例えば、銀行が幅広いインターネットバンキングの提供を始めた際、サービスを利用するための支援を行いました。また、多くのNGOが高齢者のためのデジタル支援を手がけていますし、自宅にコンピューターが無い人も図書館でコンピューターを利用して、デジタルのサポートを受けられる仕組みもあります。
【会社設立の手続きもオンラインで】
携帯電話市場の基礎を作った1990年代のノキアブームのおかげで、フィンランドには技術的なノウハウや専門知識がたくさんあります。2014年にノキアが携帯部門を売却した後、優秀な元社員によるベンチャー企業が次々と生まれました。また、ITに関する知識を幅広く学べる教育システムも、若年層にインスピレーションを与えています。
【リーダー自らデジタルツールを活用】
フィンランドの経営者は、DXを推進するために、優れたリーダーは手本を示すものです。古い方法に固執して、部下にだけ新しいサービスを使うように指示するようなことはありません。社員にデジタルツールを使わせたいなら、まずは自分で使うしかないのです。例えば、省庁では、タイムキーピングソフトを導入していますが、これは文字通り「全員」が使用します。部門長であっても、秘書が代理で作業をすることはありません。フィンランドの若き女性リーダーであるサンナ・マリン首相は、自らの発言をソーシャルメディアで積極的に発信しています。リーダー自身がデジタルツールを使いこなす姿を見せることが重要なのです。

エンジニアリング事業部・最近の実績☆☆AtoZtoA