「シリコンバレーのボス・の未来予測本」(1163号)・・半導体製造装置設計のAZA

一昨年(2020年)の暮れに邦訳が出た本で、現在までに日本でも15万部超のベストセラーになっています。著者の一人ピーター・ディアマンディスは、長寿技術から惑星資源開発まで、幅広い先進的企業20社以上の創業に関わり 、「シリコンバレーのボス」とも評される人物です。かのイーロン・マスクの「盟友」としても知られ、2014年には米『フォーチュン』誌によって「世界の偉大なリーダー50人」の1人にも選出されました。本書はそのディアマンディスが、ジャーナリスト・起業家のスティーブン・コトラーと共に著した未来予測本です。
8年後の至近未来――2030年前後の世界を予測しているだけに、読めば誰もがその内容に驚くはずです。「いまからたった8年で、世界はこんなふうに一変するのか!?」と……。たとえば、本書の冒頭近くでは、SF映画に登場する「空飛ぶ車」が、2030年には現実になっていると予測されています。
《2027年ごろには今ウーバーを呼ぶのと同じくらい簡単に、空のライドシェアをオーダーできるようになるはずだ。そして2030年には都市型航空は二つの地点間を移動できる主要な交通手段となっている可能性がある》
しかしこれはほんの一例。ほかにも多くの衝撃的な未来が描かれていきます。たとえば、次のような予測がなされているのです。
《常時オン、常時監視型のセンサーによって、まもなくスマホがあなたのかかりつけ医になる》(=「モバイルドクター」の誕生)
●《自動運転車の登場によって、車は所有するものからサービスとして利用するものになる。それによって消費者が自動車保険を利用する必要性自体がなくなる》(=自動車保険業界の消滅)
《数年もすれば人類は動物界で初めて、他の動物に一切危害を加えずにそのタンパク質を摂取する種になるだろう。私たちの孫の世代には、食肉処理場は過去の存在になる》(=培養肉の普及)
近年、テクノロジーの進化がそれほど急速になった最大の要因として、著者は「コンバージェンス(融合)」を挙げています。進化するテクノロジー同士が「融合」することによって「エクスポネンシャル(指数関数的)・テクノロジー」となり、進化が一気に加速することを意味する概念です。たとえば・・
《近い将来、私たちは1万6000の疾患を一掃する能力を手に入れる》と本書は予測しますが、その原動力こそ、遺伝子治療とCRISPR(ゲノム編集技術)という2つのテクノロジーのコンバージェンスなのです。コンバージェンスこそ、本書の最大のキーワード。これは“コンバージェンスが世界をどう激変させつつあるか?”を示した未来予測本といえます。そして、本書が予測する未来図は、どれも机上の空論ではありません。シリコンバレーで、コンバージェンスの最先端の現場に身を置く著者が、肌で感じている確かな未来なのです。激変に対応できない企業は滅びる2030年前後までに・・
《地球上の主要産業が一つ残らず、まったく新しい姿に生まれ変わ》るほどの激変が訪れると、著者は言います。
本書はそうした激変を、ビジネス・産業・ライフスタイルの広範な分野について展望した内容です。教育・食料・医療・広告など、分野ごとの未来が、各1章を割いて詳述されます。私たちの未来を丸ごと予測しているといっても過言ではない本なのです。そして、今後の激変は企業にとって大きなチャンスだが・・
《この変化に適応できない企業や産業は、困難を抱えて、やがて滅びていく》とも述べています。本書は、《すべてが「加速」する世界に備え》、変わっていくための心構えを、中小企業経営者にも迫る一冊なのです。

エンジニアリング事業部・最近の実績☆☆AtoZtoA