技術屋のサブスク今や生活に欠かせない半導体。各国では次世代半導体の開発に向けた動きが加速しています。最盛期には世界シェア5割超を誇った日本の半導体産業は、時代とともに後れを取り、現在のシェアは1割に落ち込んでいます。こうした中、次世代半導体の生産をめざす新会社「ラピダス」が先月、北海道千歳市に工場を建設すると発表しました。次世代半導体の国産化に向けた政府の戦略を解説するとともに日本の半導体産業の復活についての新聞記事のご紹介です。1980年代には世界のトップを走っていた日本の半導体産業ですが、近年は米国に次いで台湾や韓国などアジアの企業が台頭し、後れを取っています。政府は世界的な半導体不足や経済安全保障の観点から、国内の製造基盤の確保と強化に力を注いでおり、2021年6月には、半導体産業やデジタル産業を国家戦略として推進する「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめました。こうした中、大きな役割を担うと期待されているのが、ラピダスです。ラピダスは昨年11月、トヨタ自動車やNTTなど8社が共同出資した新会社。政府も最先端半導体の国産化を国策と位置つけて、新会社に700億円を助成しています。ラピダスは先月28日、北海道千歳市に工場を建設すると発表。官民挙げて回路幅が2ナノメートル相当の微細な半導体の生産技術を開発します。25年に試作ラインを立ち上げ、27年の量産開始をめざします。半導体は回路幅が微細なほど性能が高い。最先端半導体は、将来の社会基盤技術とされる量子コンピューターや人工知能(AI)、完全自動運転車への搭載が想定され、安定確保が国の成長や競争力を左右するといわれています。しかし、米国や台湾などは3ナノメートルまで量産化が進む一方、日本で製造できるのは40ナノメートルにとどまっています。このため政府は、米国の研究機関やIT大手のIBMなどが参加する研究開発の拠点も新設し、ラピダスと2本柱で開発と生産を進め、次世代半導体の量産基盤の構築をめざすとしています。
●世界トップの企業誘致も
さらに半導体産業の復活を図る政府は、半導体受託製造で世界首位の「台湾積体電路製造」(TSMC)を日本に誘致しました。現在、熊本県で工場の建設が進み、24年の稼働をめざします。回路幅が20ナノメートルの半導体に加え、10ナノ台も手掛ける。TSMCの半導体工場は地域に10年間で4兆円を超える経済効果と、7000人を超える雇用を生むと試算されています。半導体はデジタル化を進めるために不可欠な技術です。国内で半導体産業を再生していくことで、日本の産業界全体の競争力向上につながっていくことが期待されています。