半導体素材大手のJERが官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)に買収されることが決まりました。半導体は自動車や人工知能(AI)などの性能向上に欠かせない要素であり、各国政府はこれを経済安全保障上の重要物資と位置づけ、大規模な投資を進めています。日本は素材分野の技術革新を後押しし、国際競争力の強化を目指すため、高いシェアを持つJERなどの企業を支援しています。半導体製造に必要な化学薬品であるフォトレジストを生産するJSRは、半導体のサプライチェーンを守る上で重要な役割を果たしている世界トップ企業です。フォトレジストは基板に塗られ、微細な回路を作り出すために必要な素材です。JSRを含む国内の5社が世界シェアの9割を握っています。半導体素材メーカーは欧米を中心に規模を拡大していますが、国内では競合他社も多く存在し、再編が進んでいます。JICはJSRを中核として再編を進め、産業基盤を強化することを目指しています。また、海外企業による買収を防ぐ狙いもあります。半導体産業のサプライチェーンの強化が日米の共通目標であり、日本が強力なフォトレジストを守ることは非常に重要です。なぜJICがJSRの買収を行うのでしょうか。JICは政府が財政投融資を通じて資金を提供しており、民間企業だけでは難しいリスクの高い投資に取り組み、新たな産業の育成や業界再編を主導する役割を果たしています。JSRの買収総額は約9000億円で、JICは約800億円を出資し、残りを銀行から調達します。ただし、半導体産業の国際競争力を強化するには、継続的な投資が必要です。日本政府は2030年までに半導体産業の売上高を15兆円以上に、20年間で3倍に増やす方針を掲げており、2021年から2022年度には約2兆円の予算枠を半導体向け投資に確保しました。また、台湾積体電路製造(TSMC)による熊本県内の工場建設などにも補助金が交付されています。半導体は日本経済の重要な要素であり、特に自動車産業においては欠かせない存在です。自動運転や電動化の進展に伴い、その重要性はますます高まっています。政府は半導体産業の成長を支援し、2020年までに15兆円を超える売上高を目指しています。半導体向け投資には十分な予算が計上されており、産業の発展を促進しています。