「ファーブル生誕200年・大人の昆虫ガイド・・」(1322号)・・業界初・ものづくり技術支援をサブスクで提供するAZA

技術屋のサブスクもうすぐ子どもたちの夏休みです。皆さんは幼少期の夏休みにどんな本を読みしたか?今年はファーブルの生誕200年記念の年です。彼の代表作である『昆虫記』は、多くの人にとっては子供の頃に読んだ本の思い出でしょう。しかし、実際の『昆虫記』は難解な大人向けの書籍です。日本では戦前から子供向けに短縮された版が多く出版されてきたため、日本では『昆虫記』の名前がよく知られていますが、作品の舞台であるフランスではファーブルの名前を知る人はほとんどいません。現在、ファーブルの生家である南仏セリニャンを訪れるのはほとんどが日本人です。『昆虫記』の内容は、単なる虫の紹介ではありません。ファーブルは科学論文を一般向けに平易な言葉で伝えることを目指し、全10巻221章に及ぶ『昆虫記』を執筆しました。アーネスト・トンプソン・シートンの『動物記』のような物語形式ではなく、ファーブルは自らの疑問に対して「虫に聞いてみよう」と観察と実験を重ね、虫の生態を究明しました。自然観察は簡単な答えを導き出すことはありません。有名なフンコロガシ(スカラベ)の生態を解明するまでには15年もの歳月がかかりました。『昆虫記』では物語が第1巻で始まり、結論が第5巻で述べられています。ファーブルは元々学校の物理教師であり、科学啓蒙書の執筆も行っていました。『昆虫記』の執筆を始めたのは教職を離れてから56歳から84歳の間でした。当時は電気がなく、科学の知識もごく一部の人々にしか普及していませんでした。そんな時代にファーブルは南仏の田舎で自然を相手に昆虫の行動を地道に記録しました。150年前の虫たちは現代と同じような生活を送っており、ファーブルの観察は今も色褪せません。彼が解明できなかった昆虫の生活には、未解明な点が今もたくさん存在します。これは私たちにとっての「ファーブルの宿題」です。虫について考えることは些細なことかもしれませんが、科学的な思考は小さな積み重ねから始まるのです。身近にいる小さな虫が、ファーブルを通じて私たちに語りかけてくるのです。『昆虫記』を読み進めるうちに、自然に対する疑問に取り組む偉大な科学者であるファーブルの姿が浮かび上がってきます。私が出版した『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』(草思社)では、まずファーブルの時代と自然科学の発展について紹介しています。そして、日本で翻訳された完全版『昆虫記』シリーズを元に、全10巻221章のあらすじを一冊にまとめて紹介しています。さらに、世界で最も多くの昆虫記の写真を撮影してきた海野和男さんのカラー写真も多数掲載しています。本書を「道案内」として、これまでに出版された『昆虫記』の完全版を、知的な大人の読書として楽しんでいただければ幸いです。

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