2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことで、世界中でリモートワーク、オンライン学習、オンラインショッピングが急速に普及しました。この変化は、2021年に自動車を含むさまざまな電子機器の生産に影響を及ぼす半導体不足を引き起こしました。
この事態を背景に、世界は前例のない半導体ブームを迎えました。さらに、米中間の半導体に関する摩擦や台湾情勢への懸念が、世界の国々や地域に半導体製造能力の強化を急がせました。その結果、2022年以降、半導体の供給過剰により価格が急落し、深刻な不況に陥ることとなりました。これは、史上最悪レベルの半導体不況と言えるでしょう。
しかし、私たちの主要業務である半導体製造装置の設計については、この状況をほとんど感じさせないほど、現在も多くの問い合わせをいただき、忙しい日々を送っています。
そんな不況の中、米国半導体工業会(SIA)は、本年の世界半導体市場が記録的な水準へと急騰し、業界が急速に回復するとの見通しを2月5日に発表しました。
SIAの予測によれば、本年の売上高は約6000億ドル(約89兆2000億円)に達し、前年比13%増加する見込みです。2023年の世界売上高は8.2%減の5268億ドルでしたが、年下半期に売上が上昇したことで、落ち込み幅は緩和されました。
SIAのジョン・ニューファー会長は、「世界の半導体販売は2023年に低迷していたものの、下半期には強力に回復しました。この傾向は2024年にも続くでしょう」と述べています。さらに、「世界が依存する無数の製品において、半導体がより大きな、より重要な役割を担っていることから、半導体市場の長期的な見通しは非常に明るい」とも指摘しています。
業界成長の主要な推進力は、人工知能(AI)向け半導体で大きなシェアを占める米半導体メーカーのNVIDIA(エヌビディア)です。同社の2024年1月期の売上高は、前年度比でほぼ倍増し、約600億ドルに達すると見られています。また、2025年1月期には年間売上高が900億ドルを超えると予想されています。
地域別の動向を見ると、欧州は昨年4%の売上高増加を遂げ、プラス成長を確保した唯一の地域でした。最も落ち込みが激しかったのは中国とアジア太平洋地域で、中国の売上高は14%減少しました。一方、米州市場は5.2%縮小しました。