「SiCパワー半導体市場の変化と今後の展望」(1696号)

【半導体情報】SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体市場は、EV(電気自動車)市場の成長鈍化やハイブリッド車(HEV)の人気上昇により、大きな転換期を迎えています。加えて、中国企業の台頭による価格競争の激化が、各国メーカーに新たな戦略の見直しを迫っています。
EV市場の変化とSiCへの影響
欧米ではEVの成長が鈍化し、HEVの需要が増加しています。HEVはEVに比べてパワー半導体の使用量が少なく、SiC市場にとってはマイナス要因となっています。EV1台あたりの半導体搭載コストは約1,700ドル、HEVは約1,200ドルと500ドルの差があり、供給過剰による価格競争が発生しています。
主要メーカーの動向
市場環境の変化を受け、日欧米の主要メーカーは事業計画を見直しています。
•STマイクロ:2024年の売上目標を11.5~12億ドルに下方修正。
•オン・セミコンダクター:前年比2倍の成長見込みから1桁台成長に修正。
•ローム:売上目標の達成時期を延期し、社長交代を含む組織改革を実施。
•ルネサス:市場環境の変化を受け、研究開発(R&D)重視の方針へ。
中国勢の台頭と競争力の強化
一方、中国のEV市場は成長を続け、SICCやタンケブルーなど国産SiCウエハーの採用が拡大。UNT(United Nova Technology)などのファンドリー事業も強化され、価格競争力を高めています。
今後の展望と求められる対応
今後のSiC市場では、以下のポイントが重要です。
1.モジュール化の進展:放熱設計を含むパワーモジュールの開発で競争力を強化。
2.ファンドリー活用の加速:台湾ヴァンガードやエピシルが8インチSiCウエハー量産を計画。
3.市場の需給バランス調整:2027年には供給過剰が3割発生する見通し。
アザエンジニアリングの視点
当社アザエンジニアリングも、半導体製造装置の設計支援企業として市場の変化を注視し、装置メーカーが求める技術開発や設計支援を強化していきます。半導体業界は日々変化し、新たな課題が発生します。その変化に適応し、新しい技術を生み出すことこそがエンジニアリング企業の使命です。今後も市場の動向を分析し、最適なソリューションを提供していきます。